昨年11月に梨の「火傷病」の危険性について話題にした。
梨だけではなくリンゴも含め、世界ではすでに57か国で感染が確認されているとのことで、発生すれば果樹の産地を吞み込んで壊滅させる可能性があるほど危険な病気だという。
1月12日の日本農業新聞の見出しを引用すると
「火傷病の感染回避へ 長野県 中国産花粉買い取り」
https://www.agrinews.co.jp/
との記事があった。
梨の生産者として受け止めると、長野県として産地を守ろうとする決意を感じるし、他県にも広がってほしいと思う。他の新聞やネットニュースでも取り上げている。
気になるのは、農林水産省やJAなどが「生産者に(火傷病について)注意喚起している」とするが、果たしてどれほどの生産者に伝わり理解されているのかだ。
農業従事者の高齢化を憂う声が多いが、単に農業技術伝承者や筋肉量減少問題ではなく、(現従事者の)情報からの孤立や情報取得意欲の減退も問題で、「これまでと同じ時期に、周りと同じことをしていれば」との固着した農耕民族的思考は根強い(と私は感じている)事も問題だ。また、これまでそうした農家をビジネスのターゲットにしてきた関係者?も、今後どうしてゆくつもりなのか。これまでの感覚でこの問題をとらえていると、国内のリンゴや梨の産地(地域)をまるごと失う事例を聞く日が来るかもしれない。
この「火傷病」に関しては、関わる生産者への「周知徹底事項」ではないか。
「新聞やテレビ報道などで知っているだろう」では済まされないし、花粉の交配時期を前にした「講習会」などの機会にアナウンスすれば…などとしては遅い。そもそも講習会に出席するような生産者は認識しているかもしれない。むしろ「長年そうしてきた」として鈍感になっている裸の王子様が問題だ。すでに輸入が禁止されている保存花粉を使用されては生産地全体の危険性を排除できない。
だから冒頭に紹介した報道のように、長野県は(危険性のある花粉を)買い取ってでも排除しようとしているのだ。
(私が経験した)医療現場や会社組織でもよくあった事だが、「重要事項を伝えた」として周知徹底を完了したかのように語られる場面を見てきた。しかし、「注意喚起した」で済ましてよい問題ではない。「必要な相手に伝わった」のかは全く別問題であって、徹底すべき構成人員のすべてに「あなたはこの話を聞いて、理解し、やるべきことを実践していますか?」、「はい、実践しています」となって「周知徹底」ではないか。関係者の中でたった一人の過ちをも許してはならぬ問題ではないか。
リンゴ、梨について考えると、どこが?とは言えないが、生産者の園地や出荷を把握している組織、花粉の販売履歴情報を持っている組織、もしくは行政単位が「周知徹底」を行ってほしい。
情報セキュリティー問題でこんな格言があったことを思い出す。「その組織の情報セキュリティーレベルは、その組織に属するメンバーの最低レベルでしか保証できない」