• 問屋ファームでは、信州安曇野で育った果物(梨やスモモ)の販売をしています。

品種が多い悩みから「利き梨セット」発案

 息子が「今シーズン発見した品種は4品種!」などと冗談を言った。

 というのは、今は亡き義父は好奇心が旺盛だったらしく、梨畑は40アールほどで小規模なのにも関わらず、10品種近くの多品種栽培をしていた。接ぎ木をして1本の木に複数品種が実をつけている光景は畑の中に点在している。その詳細については確実には伝承されていない。

 長年一緒にやっていた義母の記憶もあいまいになっている枝があったのだが、何年か経験して観察するうちに判明してきた。また、(義母に)機会あるごとに同じ質問をすることで記憶の掘り起こしができたり、昔の思い出話の中から、梨につながる記憶の糸がたぐり寄せられるように出てきたりする場合がある。

 例えば、私が人から聞いたり書籍などで知ったわけではなく、義母の口から発せられて(私の)耳に入って知った(梨の)品種名について、ある時話題にすると(義母が)「そのような品種は知らない」などという。私としては衝撃的だ(笑)。しかし畑に出て梨の木を指差して問うとその名が出てくる。義母も89歳のスーパーばあちゃんだが無理もない。

 そこで冒頭の話となる。息子がパズルを解くかのように丹念に(義母から)話を聞いたり、気になっていた実の特徴を調べていくうちに、徐々に解明してきてやや確信に近くなってきた品種がある。これまで不明であるがゆえに、販売できずに人に差し上げたり廃棄してきたものが、ここ数年で日の目を見そうな事になるのだ。

 これまでも、そうした不明確な品種は「自家用試験栽培」などと言い逃れしてきた。遺伝子解析して証明するまではしていないが、特徴や毎年の収穫時期などで徐々にわかってきた。わからなかったが故に剪定作業などでも縮小の方向で絞り込んでいた。しかし、良い香りがしたり、糖度が高く食感も悪くないものもある。また、推測通りだとすると日持ちがする品種であったり、と捨てがたいものもある。

 この状況は悩みでもあるが、発想をかえてみた。いくつかの品種を食べ比べる機会をお客様に提供できる。であれば、数品種を組み合わせて販売して食べ比べて頂く「利き梨セット」にしてみようと考えた。

 さて、この状況は悩ましい。義父はどう思って見守っている事だろうか。

南水(左上)とサンセーキが混在する木