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コムクドリに悲しい出来事(その2)

 これまでにも巣箱に営巣したコムクドリの様子を話題にしてきた。事の始めは2020年、野鳥のためにと巣箱を製作した事から始まる。

 その時は巣箱を作っても野鳥が訪れてくれるのかも確信が持てず、とりあえず野鳥の巣箱はこんな形と思って、形状を変えて2種類の巣箱を製作した。そのうちの1つにコムクドリが営巣してヒナたちが無事巣立ちした事に気を良くしていた。

 2021年にはいくつかの書籍を読んで、巣箱に営巣する野鳥の種類は限られている事や、目的の野鳥によって巣箱のサイズはもちろん、特に注意を払うべきは招き入れようとする野鳥によって巣穴の直径を決める必要がある事を知った。

 そこで、私としてはシジュウカラかヤマガラを招こうとの思いから巣箱を製作したのだが、今度は外から眺めるだけでなく、野鳥が産卵して孵化し、ヒナが育って巣立ちする様子までの巣箱の内部を観察したいとの思いが強くなり、巣箱の内部にビデオカメラを設置した。

 幸運な事に、ヤマガラが営巣して巣立ちまでの様子を観察することができた。その途中、ヤマガラの卵が孵化した頃になって、2020年に営巣したコムクドリが多数飛来して、ヤマガラの巣箱に何度も頭を突っ込む様子があったので、それに耐えかねて急きょ予定外だったがコムクドリ用の巣箱も制作した。

 コムクドリは私が巣箱をかけるのを待っていたかのように、巣箱をかけて2日目には箱の中に入って内覧したかと思うとすぐに巣材を運びこむようになった。そして6個の卵を産んで孵化すると、ヒナに忙しくエサを運ぶようになり、その様子を映像としてとらえる事ができるようになった。

 ヤマガラの時は、まだ営巣してくれるか確信が持てずに、狭い巣箱の中に半ば強引に低機能なカメラを押し込んでWiFi接続していた。無線接続があまりに不安定な事や映像の解像度が悪かった反省から、コムクドリの場合は有線LANで接続して、解像度を上げて動体検知するカメラを内蔵させて観察した。

 しかし、悲劇はその後起きた、コムクドリのヒナが蛇(アオダイショウ)に襲われて、6羽のヒナがすべて飲み込まれてしまったのだ。落胆のあまり落ち込んでいた私をよそに、そのまた2日目には(別のつがいかもしれない)コムクドリが営巣を開始ししたことから、同じ悲劇は繰り返すまいと誓った私は、巣箱をかけた木の幹にはヘビ返しを設置して、ヘビが木に登れないようにした(つもりでいた)。

 新たに営巣開始したコムクドリは5個の卵を産んで、無事ヒナが孵化して安堵していた私は、再び信じられない光景を目にした。木にはヘビが登れないようにしたつもりなのに、またもやアオダイショウが巣箱に侵入し、4羽のヒナを飲み込んでしまったのだ。

 後で映像をチェックして知った事だが、ヘビの襲撃を察知した親鳥(メス)はいったん巣箱を後にして暗闇に逃げたあと、アオダイショウがヒナを飲み込んでいる最中に再び暗闇の中を巣に戻り、アオダイショウの上に乗って暴れて、すぐに巣箱から出ていたのだ。アオダイショウはヒナ1羽を残して巣箱を去ったことで1羽のヒナの命は救われた。アオダイショウが巣箱を去った30分後には、親鳥が暗闇の中、どうやって巣穴を認識してもどったのかはわからないが、残された1羽のヒナのもとに戻ってきたのだ。

 すぐに私は、木の上部や周辺のアオダイショウの捜索をしたが発見できず、すぐに蛇の忌避剤を購入して周囲にまいた。また、木の幹以外の侵入経路として考えられたのはビデオカメラの電源コードとLANケーブルだったので、ケーブルへの巻き付き防止を施した。2度にわたって襲撃されたのだが、これならばアオダイショウも巣箱に近づけないだろうと思っていた。

 しかし、6月30日の夜、カメラの動体検知の警告が私のスマホに届いた。ヒナや親鳥が巣箱内で動いても通知されるのだが、いやな予感がして確認する私の目には、またもや信じられない状況が飛び込んできた。残りの1羽のヒナを襲撃すべく、巣箱の内部にアオダイショウの存在を伝えてきたのだ。

 私はすぐに三脚を持って巣箱をかけている杉の木に駆けつけて、巣箱を揺らしながらアオダイショウの妨害をしつつ、最終手段として巣箱を引きずり下ろすことにした。

 アオダイショウもたまらず巣箱から出て、3~4メートルほどの高さから落下した。私は巣箱をおろすと同時にアオダイショウを探して、怒りのあまりアオダイショウを鷲づかみにして「現行犯逮捕」した。しかし、コムクドリのヒナはアオダイショウが、動きを止めるためまず絞め殺したのだろう。すでに息絶えていた。

 後で映像を確認すると、アオダイショウがヒナをほとんど飲み込んだところで、私が巣を揺らしたためビデオの逆再生のように吐き出して逃げていた。飲み込む段階ではすでにヒナの動きを止めていた事も(映像から)伺えた。

 捕らえたアオダイショウは正直言って憎い。しかし、私も同じく自分の命のために多くの命をくらって生きている。アオダイショウもいたずらにヒナを襲ったのではなく、自身の命をつなぐためにした事なのだから、憎しみをぶつけてみても仕方ない。私がコムクドリを守り切れなかったのだ。翌朝近くの室山へ逃がしてやった。

 コムクドリにはすまない事をした。私が提供した住居は安全なものではなかったのだ。1度だけでなく3度もアオダイショウの侵入を許してしまった。ヤマガラの時にはあまりにハッピーな巣立ちを迎えることができただけに、反省してもしきれない。

 アオダイショウに私は負けた!

 コムクドリよゴメンよ。